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内部留保を吐き出して給与を上げろという的外れな議論はもうやめましょう

大企業は内部留保ばかりしてけしからん!
内部留保していないで、株主や労働者に還元しろ!
などという批判を聞いたことがないでしょうか?

確かにお金を溜め込んでいるくらいなら、ちょっとくらい配当や給料にまわしても
いいような気がします。

しかしこの批判、一見もっともらしい意見に見えるのですが、
実は的外れもいいところだったりします。

会計のことをちょっとでもわかっていれば、これがいかに恥ずかしいことを
言っているのかがよくわかります。

言うなれば、私は利益とキャッシュ(現金)の区別がついていません!
または、貸借対照表の見方をわかっていません!
大声で宣言しているようなものなのです。

この記事をご覧になっているあなたは、この区別がしっかりできるようになります!

今回は、内部留保に対する批判をもとに利益とキャッシュのおさらい、
そして、内部留保が厚くても手元にキャッシュがあるとは限らないということを説明しましょう。

内部留保とはそもそも何?

概念[編集]

基本的には企業の利益金額から役員賞与、配当、役員賞与金、租税などの社外流出分を除いた部分を社内に保留することである。しかし内部留保の概念には広狭があり、具体的にどの勘定科目を内部留保の計算に用いるかをめぐって、会計学や経営分析の研究者間でも見解に相違がみられる。

狭義[編集]

最も狭義の内部留保は利益剰余金のことを指す。[要出典]利益剰余金とは、純利益から配当金や役員賞与金などの社外流出分を差し引いた金額である。必ず内部留保に含められ、貸借対照表では貸方の「資本の部」(日本では「純資産の部」)に勘定科目として表示される。

財務省・財務総合研究所の「法人企業統計調査」は、利益剰余金を内部留保として捉えている。後述するほかの科目も内部留保に加算できると考える立場から、これを「公表内部留保」と呼ぶ研究者もいる[1]。
広義[編集]

広義の内部留保として、利益剰余金のほかに以下のような勘定科目の全体または一部が内部留保に含まれるという議論がある[1][2]。下記科目のどれを用いるかによって様々な内部留保概念が想定される。「公表内部留保」(利益剰余金)だけでは、内部留保の実質額を捕捉できないという立場から、それらを「実質内部留保」と呼ぶ研究者もいる。
(1) 利益の費用化として捉える部分
(1-1) 各種引当金(全体または過大計上分)
(1-2) 減価償却費の過大計上分
(2) 資本剰余金(資本準備金)
(3) その他の包括利益(評価・換算差額等)

wikipediaより抜粋
https://ja.wikipedia.org/wiki/内部留保

狭義と広義がありますが、一般的な議論としては、狭義の概念のことを指していると思われます。

つまり、貸借対照表の純資産の部にある利益剰余金のことですね。

利益剰余金の中には、利益準備金や各種積立金、繰越利益剰余金などがあり、
損益計算書の当期純利益の分だけ増えていくイメージです。

これが、利益=お金→内部留保が厚い=お金を溜め込んでいる、という考えにつながってしまうのでしょう。

果たして本当にそうでしょうか?

利益とキャッシュは違う

以前の記事でも、利益とキャッシュは違うということは説明していますので、
ぜひご参照ください。

要は、利益はやろうと思えば操作できるし、いくら売上を上げてもお金を回収できなければ
意味のない数字になってしまいます。

また、減価償却や評価損益など、実際にお金が動かない取引もあります。

とはいえ、全く無関係というわけではなく、回収や支払いのタイムラグや
お金の動かない収益費用があるものの、ある程度の相関関係はあります。

それじゃあやっぱり内部留保が厚いということは、お金をたくさん持っているということじゃないか!

という意見がありそうです。

答えは、そういう会社も中にはあるかもしれない、です。

内部留保を吐き出せ!と批判する人たちは、おそらく利益とキャッシュの関係が
わかっていないかと思われますが、実は論点はこれだけではありません。

それは、貸借対照表の見方とも関係があります。

貸借対照表と内部留保

内部留保が厚いからといってお金を溜め込んでいるとは限らないということは、
貸借対照表を見ればわかります。

どういうことでしょうか?

それは、貸借対照表の貸方、借方を見ればわかるのです。

貸方、借方の見方については、借方貸方の覚え方の記事でも説明していますが、
ちょっとおさらいしてみましょう!

貸借対照表の貸方、右側は、お金をどうやって調達してきたか?を表しています

銀行から借りれば、借入金が負債として、
株主からの払い込みがあれば、資本金として、
そして、会社が利益を上げれば、利益剰余金すなわち内部留保として
貸借対照表の右側に記載されます。

銀行からお金を借りるのも、株主から払い込みを受けるのも
利益を上げてお金を稼ぐのも、お金を調達してくる行為ですよね。

一方、借方、左側はどうかといいますと、調達してきたお金をどのように使ったか?を表しています

勘の鋭い読者様はもうお分かりでしょうか?

そう、借方にあるのは資産。
資産は現金、預金をはじめ、固定資産などもあります。

ちなみに、貸借対照表では出てこないのですが、費用も借方に計上されます。
費用も、お金をどのようにつかったか?を表しますよね。

調達してきたお金をそのまま現預金として持っていれば、
お金を溜め込んでいる、と批判されても仕方ないでしょう。

しかし、たいていの企業はそうではありません

預金を多めに持っている企業もありますが、
これは不測の事態に備えて、従業員の給与や取引先への買掛金、銀行の借入金を
返せるようにするためです。

有名なところでは、任天堂がそうです。
仕事をしなくても、数年は従業員に給与を払えるそうです。

ここまでお金に余裕のある企業は、いわゆる超優良企業であり、普通はここまでの余裕はそうそうありません。

どうなのかというと、明日の仕事のために投資をするわけです。

費用を使って宣伝をしたり、商品を仕入れたり、
固定資産を買って事業を拡大したりしているのです。

つまり、調達してきたお金は、普通は現金のまま置いておかず、
費用として使ったり、商品や固定資産などに姿を変えたりしているのです。

このような状況で内部留保を吐き出せ!というのは、
商品や建物や機械を売り払ってお金に変えて、株主や従業員に払え!と
言っているのとほぼ同義なわけです。

当然、こんなことがまかり通れば、会社は仕事を続けることができません。

まとめ

以上より、利益とキャッシュの区別がついていなかったり、貸借対照表の見方がわかっていないと、的外れな意見になってしまうのです。

いくら内部留保が厚くても、会社は普通そのお金を投資に回して、より良い仕事をしようとしています。

もちろん、必要な投資をせずに、目的もなくお金を溜め込んでいるのは、批判されても仕方ないとは思います。

ですが、全部の会社がそうではないということは理解してください。

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