連結決算を行う上で必要になってくるのが、内部取引の消去です。
この内部取引の消去とはいったいどういうものなのでしょうか?
今回は、連結決算のメインとも言える、内部取引の消去について説明していきます。
この記事をお読みいただければ、内部取引消去の基礎がわかりますよ!
内部取引の消去ってそもそも何?
字面からなんとなく意味は分かりそうですが、いったいどういうものなのでしょうか。
やることは至ってシンプル。
グループ会社間での取引をなかったことにします。
連結決算は、いわばグループ会社全体を一つの会社に見立てて行う決算のことです。
まずはこれが大前提ですので、覚えておいてください。
グループ会社全体で一つの会社なので、それぞれの会社は、それぞれの部署のようなものです。
同じ会社の中での取引なので、その実績が決算書類に載っていてはおかしいですよね?
例えば、同じ会社の製造部門が営業部門に製品を引き渡して、外部のお客さんに売った場合には
製造部門には社内売上、営業部門には社内仕入といった科目が計上されます。
しかし、決算では社内売上と社内仕入は相殺して0円にするはずです。
損益計算書には載ってきませんよね?
連結決算でも同じ考え方です。
製造会社で作った製品を、販売会社が仕入れて、外部のお客さんに売ります。
個別決算では、製造会社の損益計算書には販売会社への売上が載っています。
グループ会社といえど、個別の会社で見ればあくまで外部のお客さんです。
逆に、販売会社では製造会社からの仕入れが貸借対照表、もしくは損益計算書に載っています。
個別決算ならこのままでもいいのですが、問題は連結決算をする場合。
グループ会社全体で一つの会社とするので、製造会社=製造部門、販売会社=営業部門とみなし、それぞれ社内売上、社内仕入と同じものと考えます。
つまり、製造会社の売上高と販売会社の仕入を相殺して0円にする。
これが内部取引の消去の考え方です。
具体的な処理方法
考え方はわかりましたでしょうか。
すぐにはわからなくても、グループ会社全体を一つの会社として考える、ということを押さえておけば考えやすいと思います。
では、具体的な処理を見ていきましょう!
内部取引の消去には、大きく分けて以下の4つがあります。
・投資と資本の相殺消去
・債権債務等の消去
・取引高の消去
・未実現利益の消去
それぞれ見ていきます。
投資と資本の相殺消去
これは主に、子会社の資本金と親会社の関係会社株式を相殺します。
厳密にいうと、土地等の評価損益や子会社を買収した場合の投資額と純資産の差額である「のれん」など、細かい点はたくさんあります。
ここでは、基礎を説明しますので、難しいことは割愛します。
親会社は子会社の株を持っていますので、子会社の資本金には親会社からの出資が含まれています。
グループ全体で一つの会社なので、一つの会社として考えると、会社の預金の一部が経理部門から営業部門に動いただけと考えることができます。
この場合、会社全体の預金は増えても減ってもいませんよね?
もし、投資と資本の相殺消去をしないとどういうことになるでしょうか。
連結決算をすると、グループ全体の資本金が合計されてしまうことになりますよね?
いわば、親会社の預金が子会社に移っただけなのに、グループ全体の預金が増えたように見えてしまいます。
こうなってはおかしいので、消去するわけです。
で、結果、残るのは親会社の資本金のみになればOKです。
債権債務等の消去
これは、例えば、親会社が子会社に商品を販売した場合の売掛金、買掛金などがあたります。
これもグループを一つの会社とみなした場合、商品の場所が親会社から子会社に移っただけです。
ですから、連結決算上は、グループ間の債権債務はないものとします。
債権債務に限ったことではなく、前払費用と前受収益など、資産負債全般が債権債務等の消去に該当します。
取引高の消去
これも債権債務と同じ考え方です。
債権債務を消去するので、同じように売上と仕入(売上原価)も消去しなければなりません。
売上高を消去しなくてよいということになってしまったら、グループ間で取引を繰り返し、売上を水増しするということもできてしまいます。
こうなってはおかしいですよね。
なお、取引高の消去では、親会社が売上で計上していても、子会社は必ずしも仕入で計上しているとは限りません。
親会社が売上高、子会社は販管費であるということや勘定科目が多岐にわたっていることも十分に考えられます。
この場合は、売上高に対する販管費等の合計で比べて、一致しているかを確認します。
未実現利益の消去
これは、いままで説明してきた項目よりも、いかにも連結決算っぽい項目です。
とはいっても、考え方は同じで、グループ会社全体を一つの会社とみなすということを前提に考えれば納得がいくと思います。
未実現利益とは、文字通り実現していない利益です。
連結グループ内であっても、商品を販売するときは販売側の会社は必ず利益分を乗せて販売しますよね?
そして、買った方の会社は利益が乗った商品が在庫になります。
具体的な仕訳を見てみましょう。
原価100、販売額120の製品があったとします。
これをグループ会社から仕入れて、外部に140で販売したとしましょう。
販売側
・仕入れた時
商品100/買掛金100
・販売した時
売掛金120/売上高120
売上原価100/商品100
購入側
・グループ会社から仕入れた時
商品120/買掛金120
・グループ外に販売した時
売掛金140/売上高140
売上原価120/商品120
外部に売り終わった場合は問題ないのですが、問題は在庫に残っているとき。
もともと販売側で100だった在庫が、グループ内で販売したら120になっています。
くどいようですが、連結決算はグループ会社全体を一つの会社と考えるので、グループ内での販売は商品の移動に過ぎません。
同じ会社内で商品の保管場所を変えただけで、商品の金額が変わるなんてことは普通ありえないですよね?
だから、この例では、120になってしまっている製品の金額を100に戻してあげる必要があるのです。
仕訳にすると
売上原価20/商品20
です。
実際に処理するときには、商品ごとの利益率がわかればその利益率を、商品ごとにわからなければPL上の売上総利益率を、在庫金額にかけて計算します。
まとめ
内部取引の消去の基礎的な部分について説明をしてきました。
なかなかとっつきづらいところかと思いますが、何度も何度も出てきているように、グループ会社全体で一つの会社と考える、という考え方ができるようになれば内部取引の消去もわかりやすくなると思います。
すぐにわかるようになるのは難しいですが、少しずつ覚えていきましょう!
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