手形の割引という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
実家も自営業で手形を使うことがあるのですが、よく「手形を割る」なんて言っていました。
管理人は、恥ずかしながら、最初なんのことだかわかりませんでした。
手形の割引?安くなるの?何、手形を割るって。割れるものなの?なんて本気で思っていました。
さて、そんな手形の割引についてご説明いたします。
手形の割引って何?
簡単に言ってしまえば、手形を現金化すること、です。
受け取った手形(受取手形)は、支払期日が来ると現金化できます。
通常でしたら、この支払期日が来て現金化されるのを待てばいいのですが、企業は時に予定外の大きな仕入れが必要になったり、入金になるはずだったものが遅れていたり・・・と様々な理由で急に現金が必要になることがあります。
しかも、手形は一般的に現金化されるのが遅いです。
現金だと大体1か月後くらいには入金になることが多いのですが、手形ですと3ヶ月くらい待たされることがあります。
すぐに現金が必要になったときに、手形の支払期日がやってくるまでの数十日を待たずに手形を現金化する方法の一つとして有効なのが『手形の割引』です。
手形の割引というのは、『手形を担保にして、額面金額(手形に書かれた金額)を銀行から借り入れる』という行為です。
銀行は手形の期日が来るまで現金を受け取ることができません。
つまり、「3か月後に手形で入金されるお金で返済しますよ」ということでお金を借りているのと同じなのです。
銀行からお金を借りると利息がかかりますが、手形の割引には利息がかかりません。
その代わりに『割引料』という名の手数料がかかります。
割引料は日割り計算のため、割引を行った日から期日までの期間が長ければ長いほど高くなります。
この点は銀行からの借入利息と同じ考え方ができますね。
借入金と借入金の利息について知っていれば、そう難しいことはありません。
この割引料は手形を現金化するときに支払うのではなく、手形の額面金額から差し引かれます。
例えば、額面100万円の手形を銀行に持ち込んで割引して、3万円の手数料がかかったとします。
その場合は、97万円の現金を受け取ることになります。
身近な例
例えばあなたが1000円の商品券を持っていたとしましょう。
欲しいものがあって現金が必要になったけれど、その店では商品券が使えなく、手元には現金がないとします。
あなたは金券ショップに持っていって商品券を売る、という選択肢を選びました。
ところが、金券ショップでは1000円の商品券を1000円では買い取ってくれません。
この時の金券ショップでの買取価格と似たような状況が『手形の割引』なのです。
というか、もっと簡単に考えると、銀行も金券ショップも1,000,000円の手形や金券を買い取って、あとで1,000,000円受け取っただけでは単なるタダ働きです。
しかも、手形を発行した会社が手形代金を払えなかったり、金券が在庫になって売れなかったりするリスクを抱えることになります
だから、手数料という名目でリスク分のもうけがないと割に合わないんですね。
手形の割引の流れ
手形の割引の流れ、ちょっとわかりにくいですか?
では順を追って説明しましょう。
1 7/20にA社に商品を売り、代金を約束手形で受け取りました。
手形の期日は9/20でした。
2 8/20に現金が必要になり、①で受け取った約束手形を現金化しました。
上記1のとき、8/20に割引したので、手形は実際の期日9/20まであと1か月あります。
あなたは銀行に手形を渡し代わりに現金を得ましたが、銀行は9/20まではA社から手形代金を受け取ることができません。
つまり銀行は自分のお金をあなたに貸してくれたということになります。
ここで先述の利息に相当する『割引料』が発生するのです。
仕訳はどうやってやるか
さて、仕訳ですが 手形を受け取ったときにはまず『受取手形』が借方に来ます。
受取手形 1,000,000 /売上高 1,000,000
それを現金化した時には『受取手形』が手許からなくなるため貸方に来ます。
しかし受け取った現金は額面金額から割引料が差し引かれているため『現金=受取手形の金額』ではありません。
引かれた割引料の勘定科目は『手形売却損』と呼び、『現金+手形売却損=受取手形の金額』となります。
現金 970,000 /受取手形 1,000,000
手形売却損 30,000
この図式だけ覚えておけば手形の割引は大丈夫でしょう。
まとめ
手形の割引についてご説明いたしました。
やはり会計用語で言われると、難しく考えてしまいがちですが、何のことはなく、手形を引き取ってもらって現金を受け取るだけのことです。
で、手形を引き取る方は手形が現金化されるまで時間がかかったり、最悪、現金化されないリスクもあります。
そのために、割引手数料という手数料を取るわけで、これが利息に相当します。