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財務諸表の分析方法 初心者でも使える基本的な指標を5つまとめました

財務諸表の読み方というと、小難しい研修や試験などでご覧になったことがあるのではないでしょうか?
もしお目にかかったことがあるならば、何とか比率とかいうのがたくさん出てきて、頭が混乱してしまうというのがわかると思います。

管理人も一緒です。
こういう比率が10個も20個も並んでいるのは、結構嫌いです。
しかし、知っておくと何かと便利だったりします。

自社の安全性や稼ぐ力などが数値化されるので、上手く使えれば改善点が見つかることもあります。

今回は、財務諸表の読み方を整理してみましょう。

何はともあれ安全性

会社を経営していくうえで一番大事なのは、当然ながら会社を潰さないこと。
ですから、今の会社の状態を見て、安全性が高いか低いかを数値化することはとても大事なのです。

短期的な安全性を見る当座比率

まずは、目先の安全性を見ていきましょう。
当座比率は当面の支払に対して、当面のお金があるかどうかを見る指標です。

計算式:当座資産/流動負債

はい、例によって意味不明ですね。

当座資産というのは、現金預金、売掛金、受取手形、有価証券といったもののことです。
早い話が、すぐに現金化できる可能性が高いもの、です。

流動負債は貸借対照表の右上の流動負債そのままです。

流動負債は1年以内に支払わなければならないものですので、これを手持ちの資金でまかなえるかどうか、を見ることができるのです。

ちょっと注意が必要な流動比率

一般的に、短期的な安全性を見る場合、真っ先に上がってくるのがこの流動比率です。
流動比率は当座比率とは違って、流動資産全てが計算の対象になります。

計算式:流動資産/流動負債

流動資産には、仕掛品や製品といった棚卸資産も含まれます。
このあたりは売ったとしても、売掛金になってから現金預金が回収されるのが一般的ですので、当座比率と比較すると若干計算結果が甘くなる傾向があります。

特に、過剰在庫があると流動比率がとても高くなり、安全性が高いと錯覚してしまうことがあります。
当然、過剰在庫である以上は販売することが難しいため、実際には現金化されにくいといえます。

安全性を見る場合は、できれば当座比率を使った方がより厳密に安全性を把握することができます。

長期的な安全性を見る自己資本比率

自己資本比率は、どちらかと言えば長期的な安全性を見るときによく使われます。

計算式:純資産/総資産

自己資本は文字どおり自分自身の資本、返す必要のないお金です。
出資してくれている株主には配当金という形で支払いをしますが、それでも借入金のように元本を返す必要はないのです。

それに対して、借入金や買掛金などの負債は他人資本と呼んだりします。
いつかは支払いをしなければならないお金です。

ですから、自己資本が多い方が、将来出ていくお金が少ない=安定性が高いということになります。

赤字続きで、純資産がマイナスになってしまうことを債務超過といい、非常に危険な状態です。
負債=他人資本で何とかお金を捻出しているということなので、利益を上げる対策が必要になります。

自己資本比率は高いに越したことはないのですが、高すぎる場合は逆に守りに入ってしまっている可能性も考えられます。
いわゆる無借金経営だと、当然自己資本比率は高くなりますが、借り入れをして事業を拡大するチャンスを逃しているという見方もできますので、事業を拡大する投資もきちんと行われているか、ということで成長性を見ると良いでしょう。

稼ぐ力はどの程度?

貸借対照表では、主に安定性を見てきました。
しかし、安定性は高くても収益力、つまり稼ぐ力が低くては、いずれじり貧になってしまうことが考えられます。

次は、損益計算書と貸借対照表を使って、収益力を見ていきます。

会社全体の資産を活かして稼いでいるかを見る総資産利益率(ROA)

まずは総資産利益率。
アルファベットでROAと言われるやつです。
ROAは、Return On Assetの頭文字をとったもので、Assetの日本語訳が資産だということがわかれば覚えやすいでしょう。

さて、このROAは総資産、つまり会社が持っている全ての資産を使って、どれだけ稼げているかを見ることができます。

計算式:利益/総資産(利益は当期純利益だったり経常利益だったりケースバイケースです)

ですから、このROAが大きければ大きいほど、少ない資産で多くの利益を稼いでいる、と言えます。

株主資本でどれだけ稼げているかを見る純資産利益率(ROE)

ROAとよく似ている指標に、純資産利益率、ROEがあります。
Return On Equityの頭文字をとってROEです。

計算式:利益/純資産(非支配株主持分や新株予約権といった特殊な項目は除く)

Equityはここでは、純資産という意味です。
純資産は株主資本とほぼ同様の意味で、出資した株主としては自分たちの持ち分をどれだけ効率的に使って利益を上げているかが気になるわけです。

ということは、株主に対して「利益をちゃんと効率よく上げていますよ」というアピールをするためには、このROEを高めなければなりません。
当期純利益をベースにしたROEは日本企業では一般的に5%と言われおり、10%を超えていれば非常に収益性が高いとみてもよいでしょう。

ROEの注意点

ROEを使う際の注意点としては、ある程度操作ができてしまうことがあります。

注目してほしいのはROEの分母が純資産であるということ。
利益が同じであれば、純資産が小さければ小さいほどROEが高くなってしまうのです。

例えば、当期純利益が100円のA社とB社があったとします。
A社の純資産は1,000円、B社は5,000円であったとしたら、ROEはA社10%、B社は2%となります。

これを利用して、自己株式を買ったり、多額の配当を出したりして純資産を圧縮することでROEを高く見せるということができてしまいます。

また、純資産の額が少ないということは、その分負債が多く、自己資本比率が低い可能性もあります。
ROEはただその数値だけを見て、良い悪いを判断するのではなく、自己資本比率などを見て総合的に判断する必要があるのです。

指標だけに頼らない

このような指標を覚えると、ついつい使ってみたくなりますよね?
で、自社や上場会社の決算を見て、自己資本比率やROEを出してみて満足してしまう。
で、「自己資本比率70%か、すごいね。」「ROEが2%しかないな。」で終わってしまうことがしばしば。

このような指標はあくまで道具、もっと言えば単なる計算結果に過ぎません。
もちろん、これを使ったからといって、すぐさま業績が改善するわけではないのです。

大切なのは、指標だけでなく過去からの業績の推移やその増減、資産や負債や純資産の増減、売掛金や在庫の金額は適正なのか、といったことを総合的に分析することです。
大変難しいことですが、経理たるもの並べた財務諸表を見るだけで会社の状態が見抜けるようになりたいものです。

まとめ

財務諸表の読み方を勉強しようとして挫折する理由の一つが、たくさんの指標が出てくるためです。
管理人自身、指標がたくさん出てきて覚えられない!という思いを、勉強するたびにしてきました。

まずは、最低限必要な指標だけを覚えてみませんか?
今回ご紹介した指標だけでも、最低限の分析はできるはずです。

ですが、もっと本格的に分析をしたいのであれば、過去の業績などもきちんと把握した上で、これらの指標を付け加えて分析するという方法をおすすめします。