固定資産とは、資産のうち、会社で使うことを目的とした(=売るためではない)資産の事を意味します。

ただし、売ることを目的とはしていなくても、使わなくなった固定資産は通常売却します。
家で考えても、使わなくなった車は中古で売ったりすることもあるでしょう。

簿記で固定資産を売るとなると、少し複雑です。
あなたもこの記事をお読みということは、少なからず固定資産の売却仕訳に疑問があるのではないでしょうか?

たしかにすごくわかりづらいですよね。
なぜなら、会社で使った車などは、減価償却といって、使って消耗した(価値が下がった)分を計上しなければならないからです。

今回は固定資産の売却とその仕訳の方法について説明しますね。

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固定資産の購入の仕訳

固定資産の購入の仕訳は簡単です。
商品を仕入れる時の、分記法の仕訳とほとんど変わりません。

(例題1)A社は平成21年1月1日、車を3,000,000円で購入し、代金は小切手で支払った。

簿記の上では車は「車両運搬具」(もしくは単に「車両」)です。
車両運搬具という資産が3,000,000円増え、小切手を振り出したので当座預金がその分減少します。

(借方)         (貸方)
車両運搬具 3,000,000  当座預金 3,000,000

ただし、固定資産の代金を後払いするときは注意が必要です。

(例題2)A社は備品を1,000,000円で購入し、代金は後日支払う事になっている。

貸方は、「備品 1,000,000」ですね。貸方は、商品を仕入れる時なら「買掛金」ですが、固定資産の時は買掛金勘定は使うことができません。
代わりに、「未払金」(負債)を使います。

(借方)      (貸方)
備品 1,000,000  未払金 1,000,000

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固定資産の減価償却

先ほども言ったとおり、固定資産は使えば消耗し、価値が下がります。
使って消耗し、価値が下がった以上、その分を損失(費用)として計上しなければなりません。
これが「減価償却」です。

事業などの業務のために用いられる建物、建物附属設備、機械装置、器具備品、車両運搬具などの資産は、一般的には時の経過等によってその価値が減っていきます。(中略)減価償却とは、減価償却資産の取得に要した金額を一定の方法によって各年分の必要経費として配分していく手続です。
(引用:国税庁HP「減価償却のあらまし」)

なお、減価償却にはいろいろなやり方があるのですが、ここでは3級の範囲である「定額法」を解説します。

(例題3)(例題1)で購入した車について、期末(12月31日)を迎えたので減価償却を行う。
ただし、耐用年数は5年、残存価額は300,000円とする。

定額法における減価償却は、耐用年数(何年使えるか)の間、毎年同じ額、固定資産の価値を減らしていきます。
この問題の場合、購入当初3,000,000円の価値があった車が5年で300,000円の価値になってしまうので、
(3,000,000-300,000)÷5=540,000より、毎年540,000円価値を減らしていきます。

その際、借方には「減価償却費」という費用を計上するのですが、貸方に計上する勘定科目は2通りあります。

[直接法]

直接法では、固定資産(この場合車)の価値が540,000円下がったのだから、車両運搬具という
資産の額を直接減らしてしまおうという考え方です。
(借方)        (貸方)
減価償却費 540,000  車両運搬具 540,000

[間接法]

間接法では、借方の「減価償却費 540,000」は変わらないのですが、貸方には「減価償却累計
額」というのを計上します。
これは「評価勘定」と言って、資産のマイナスを表す勘定です。
(借方)        (貸方)
減価償却費 540,000  減価償却累計額 540,000

どちらのやり方も正しいのですが、より詳細に書かれている間接法のほうが一般的で、試験にも出題されます。(直接法は、正直覚えなくても支障はないと思います)
ちなみに、直接法か間接法、購入時の価格、耐用年数、残存価額は問題文で与えられます。

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固定資産の売却の仕訳

固定資産の売却は、仕訳の大まかな考え方としては商品を売った時の分記法の仕訳のような考え方です。
しかし、減価償却がある分、単純な分記法のようにはいきません。

(例題4)A社は(例題1)で購入した車を26年1月1日、B社に350,000円で売却し、代金は現金で受けとった。

この場合も、直接法か間接法かで仕訳は異なります。

[直接法]

直接法の場合、仕訳は単純です。
5年前に購入した車で、既に5回の期末を迎えてて減価償却は終わっているはずなので、車両運搬具の帳簿上の価格は300,000円です。

そして、直接法の場合は、帳簿上、「車両運搬具という資産が300,000円」となっているので、車両運搬具という資産を300,000円分減少させ、受け取った現金(資産)を計上し、その差額(350,000-300,000=)50,000円を「固定資産売却益」という収益に計上します。

(借方)     (貸方)
現金 350,000  車両運搬具 300,000
         固定資産売却益 50,000

[間接法]

間接法のほうが少し複雑になります。
5年前に購入し、減価償却5回分終わっているので、車両の価値が300,000円というのは変わらないのですが、間接法の場合、「車両運搬具という資産が3,000,000円あり、それに減価償却累計額という評価勘定(負債のようなもの、と考えてください)2,700,000円分ある」ということですので、売る際はその両方を消さなければなりません。

資産は左側(借方)なのでその減少は右側(貸方)。評価勘定は右側に書いたので、その打消しは左側(貸方)です。

(借方)           (貸方)
現金 350,000        車両運搬具 3,000,000
減価償却累計額 2,700,000  固定資産売却益 50,000

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固定資産を期中に売却した場合は?

もちろん、固定資産の減価償却が終わっていない状態で売ることもあり得ます。

(例題5)A社は(例題1)で購入した車を平成24年7月1日、B社に1,100,000円で売却し、代金は後日受け取ることにした。

この場合はどうでしょうか?

購入したのが平成21年1月1日なので、購入してから3年半経過しています。

期末(決算)が12月31日なので、21年、22年、23年の12月31日に減価償却はされているはずですが、平成24年1月1日から7月1日まで、6か月分はまだ決算を迎えていないので、その分の減価償却を行う必要があります。
つまり、月割で減価償却費を計算するわけですね。

減価償却の額は、1年で(3,000,000-300,000)÷5=540,000(円)。
6か月分ですので、540,000÷12×6=270,000。
この270,000については、売却時に減価償却をする必要があります。

また、売却時の仕訳においては、今まで決算を迎えた分はすでに減価償却はされていると考えるので、ここで減価償却をする必要はありませんが、今までにいくら分減価償却が行われているかを計算しなければなりません。

1年間での減価償却の額は先ほど求めたとおり540,000。
3回分の減価償却が終わっているので、540,000×3=1,620,000(円)です。

[直接法]

今までの減価償却の累計額が1,620,000円なので、帳簿上の車両運搬具は1,380,000円。

決算を迎えていない分の減価償却は270,000円ですが、これは売却時に計上します。

1,380,000-270,000=1,110,000の価値がある車が1,100,000円でしか売れなかったので、差額の(1,110,000-1,100,000=)10,000円は、「固定資産売却損」(費用)に計上します。

代金の1,100,000円は後日受け取るのですが、この場合も売掛金は使わず、代わりに「未収金」勘定(資産)を使います。

(借方)         (貸方)
未収金 1,100,000     車両運搬具 1,380,000
減価償却費 270,000
固定資産売却損 10,000

[間接法]

売却時に減らす資産は間接法の場合、車両運搬具の購入時の価格である3,000,000円です。
また、評価勘定である「減価償却累計額」は今まで決算を迎えた分のみ減らすので、1,620,000円。
未決算の減価償却費は売却時に費用として計上し、差額を固定資産売却損として計上します。

(借方)           (貸方)
未収金 1,100,000      車両運搬具 3,000,000
減価償却累計額 1,620,000
減価償却費 270,000
固定資産売却損 10,000

なお、特に間接法の仕分けは複雑で、特に固定資産売却益(損)の計上は難しいと思いますが、売却益・損についてはもう一つ別の解き方があります。

例題5の間接法で見ていきましょう。

まず、売ったとき増える資産(売った価格。この場合未収金)、減価償却累計額、減価償却費を借方に計上します。

そして、その資産のもともとの価格(この場合3,000,000)を貸方に計上します。

(借方)           (貸方)
未収金 1,100,000      車両運搬具 3,000,000
減価償却累計額 1,620,000
減価償却費 270,000

この時点で、借方の合計は2,990,000円で、貸方は3,000,000円です。
簿記の仕訳は貸方と借方の合計は必ず等しくなるので、左右を一致させるためには左に差額の10,000円を計上しないといけませんよね。

この場合、左に来るので費用=固定資産売却損。というわけです(右に来たら利益=固定資産売却益)。

こっちのほうが簡単ですね。

1つを除いた勘定をすべて書き、左右の合計金額が等しいという簿記の決まりから残りの金額を求める、という方法は意外と試験でも通用したりするので、お勧めです。

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まとめ

ちょっと複雑な固定資産の売却仕訳についてまとめました。

簿記を勉強してやっぱり躓きやすいのが固定資産かと思います。
実務の世界でもそうです。

管理人は固定資産の担当になったとき、まず、仕訳が意味わかりませんでした。
何度も何度も処理をしながら覚えたという感じです。

ですから、簿記の勉強では、実物が無い分よけいにわかりづらいです。

一個ずつ理解しながら進めていけば、決して理解できないわけではないので、あせらず頑張ってみて下さい。
もし、不明点がありましたら、管理人の無料相談もありますので、ぜひご活用くださいね!