はじめに:リース会計基準が変わる背景
リース取引の会計処理を定めたルールが大きく変わると聞くと、「今までの会計処理とどう違うの?」と思いますよね。
実は、従来の日本のリース会計基準は、国際基準と基本的に整合的なもののはずでしたが、IFRS(国際財務報告基準)第16号が2016年に公表されて以降、特に「オペレーティング・リース」の扱いに違いが生じていました。
今回の新リース会計基準では、国際的な流れに合わせて「借手が原資産を使う権利をオンバランスする」という考え方をベースに、オペレーティング・リースも含めて全てオンバランス化するモデルが採用されます。
「なぜわざわざ変えるの?」と思う方も多いかもしれませんが、リース負債を含めた真の財政状態を表すため、国際基準に近づけることが大きな理由です。
企業にとっては、バランスシートの見え方が変わる可能性があるので、早めに情報を押さえておきましょう。
新リース会計基準の基本的な考え方
今回のリース会計基準では、「リース=使用権資産を取得し、リース負債を計上する」モデルが採用されました。
ファイナンス・リースやオペレーティング・リースといった分類によらず、全てのリースをオンバランス化する点が大きな特徴です。
つまり、これまでオフバランスで処理されていたオペレーティング・リースも、借手の貸借対照表に資産(使用権資産)と負債(リース負債)を計上することになります。
「負債が増えるのは困る…」と思うかもしれませんが、海外の基準では既に導入されており、より正確な財務状況を示せるメリットもあります。
借手が支配する使用権を資産として認識し、減価償却費とリース負債の利息相当額を費用として計上する「単一モデル」が採用される点も押さえておきたいですね。
適用範囲は?どのようなリースが対象になるのか
今回のリース会計基準は、名称にかかわらず、リースに該当する契約(借地権を含む有形固定資産のリースを中心に)を対象としています。
ただし、以下のような一部の取引は適用範囲外となるので注意が必要です。
具体的には、公共施設等運営権の取得や、収益認識会計基準がカバーする知的財産のライセンスの供与など、特定の範囲に含まれる取引は外されます。
また、個別財務諸表と連結財務諸表の扱いを区別しないことも今回の特徴です。
従来のルールのように、個別財務諸表だけ特例的な会計処理を行うわけではなく、連結と個別を同じ処理に統一する方針が示されていますよね。
つまり、多くの企業にとっては、連結と個別の両方で会計処理の見直しが必要になるかもしれません。
リースの定義 IFRS第16号との整合性を重視する
リースの定義が明確になると、「実はこれもリースだったのか」という契約がオンバランス対象になる場合もあります。
新リース会計基準では、IFRS第16号と同様に、「原資産を使用する権利を一定期間対価と交換に移転する契約」をリースと定義し、借手と貸手の両者に適用することになりました。
具体的には、「特定された資産を使用する権利」や「使用期間全体を通じての支配」を満たすかどうかで判断します。
「細かいガイダンスはどうなるの?」と思うかもしれませんが、IFRS第16号の主要な定めを取り入れつつ、実務的に取捨選択が行われているので、日本独自の部分も多少は残されています。
リースの識別:オンバランスの範囲が広がる可能性
リースの定義に加えて、具体的に「どの契約がリースに該当するのか」を判定するのが「リースの識別」です。
新リース会計基準では、IFRS第16号の主要な定めに基づき、特定資産の使用を支配する権利が移転しているかどうかを判断します。
これまでリースとして認識していなかった契約でも、再評価の結果、実はリースだったと判定される可能性があるわけですね。
もしリースと識別された契約が多ければ、その分だけオンバランスする資産・負債の数も増えます。
そのため、導入準備にあたっては、社内で契約を洗い出し、リースの定義や識別ガイダンスに照らして確認することが大切ですよね。
借手のリース期間や会計処理は?オプションや費用配分に注意
リース期間の決定も、リース負債を計上する金額に大きく影響するポイントです。
延長オプションや解約オプションがある場合、実際に行使するかどうかを「合理的に確実」と判断できるかどうかでリース期間を変えます。
将来的に延長しそうだと思っていても、「経済的インセンティブ」などを根拠に判断するため、実務では慎重に検討が必要です。
借手の会計処理では、使用権資産とリース負債を計上し、原則として利息法で費用を配分します。
しかし、重要性が乏しい場合の「簡便的な取扱い」や、短期リース・少額リースの特例も設けられているので、実務負担の軽減も考慮されていますよね。
自社の取引規模や契約内容に合わせて適切に選択しましょう。
セール・アンド・リースバック取引も変更に
「セール・アンド・リースバック取引」についても、今回の新基準で大きな見直しが行われました。
売却が実際に行われたと認められる場合とそうでない場合で、借手側の処理が変わる仕組みです。
IFRS第16号ではなくTopic842(FASB基準)を参考にして開発されたため、IFRS任意適用企業に対する取扱いも注意点があります。
具体的には、売却に該当するかどうかで、売手(借手)の損益認識やリースバック取引の評価が異なるため、実務では契約内容のチェックが欠かせません。
適用時期と経過措置:いつから何をすればいい?
「いつからこの新基準を使わなきゃいけないのか」と気になりますよね。
原則的な適用時期は2027年4月1日以後に開始する会計年度(3月決算なら2028年3月末)からですが、早期適用も2025年4月1日以後開始の会計年度で認められています。
つまり、最大で2年半程度の準備期間があるイメージです。
また、導入にあたっての経過措置も用意されています。
過去のファイナンス・リースやオペレーティング・リースをどのようにオンバランスに組み替えるか、遡及適用はどう扱うかなど、実務負担を軽減するための特例が複数設定されているので、しっかり確認しておきましょう。
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まとめ
今回の新リース会計基準では、ファイナンス・リースやオペレーティング・リースを区別せず、借手が使用権資産とリース負債をオンバランス化することが大きなポイントです。
国際基準(IFRS第16号)との整合性が重視されており、リースの定義や識別などで今までと違う実務が求められる場合があります。
適用時期は2027年4月1日以降ですが、早期適用も可能です。
新基準の導入準備では、契約の洗い出し、オプションや経過措置の検討など、やるべきことが多いですよね。
しかし、適切に準備すれば、国際的な整合性のある財務報告ができ、企業の財務状況をより正確に表せるようになります。
ぜひ、この機会にリース契約を見直し、新基準に向けた体制を整えておきましょう!