前払費用や前渡金はまだサービスを受けていなかったり、品物を買っていなかったりするときに使う勘定科目です。
問題になってくるのが、消費税。
消費税は基本的に、サービスの提供を受けたり、品物を買ったりしたときに計上します。
(1) 棚卸資産の販売又は固定資産の譲渡
棚卸資産の販売又は固定資産の譲渡の時期は、原則としてその引渡しの日になります。(2) 資産の貸付け
資産の貸付けについては、契約や慣習などにより支払日が定められている場合はその定められた支払日です。(3) 役務の提供
請負による役務の提供の時期は、原則として、物の引渡しを要する請負契約にあっては目的物の全部を完成して引き渡した日、物の引渡しを要しない請負契約にあってはその約した役務の全部の提供を完了した日です。
また、請負を除く人的役務の提供の時期は、原則としてその人的役務の提供を完了した日です。(4) 延払基準等
リース譲渡で延払基準を適用している場合や工事の請負で工事進行基準を適用している場合には、それらの基準に従って売上げを計上する日とすることができます。引用元: 国税庁
今回は前払費用、前渡金の消費税計上時期の考え方についてご説明します。
前払の段階では消費税は計上しない
もったいぶっても仕方ないので、いきなり答えです。
消費税法によると、消費税は資産の譲渡、役務の提供があった時点で認識するとなっています。
前払、前渡ということはまだ資産の譲渡も役務の提供もされていないことがほとんどなので、消費税を計上しないのです。
前払費用の仕訳
前払費用の仕訳は、
- 前払いしたとき
- 前払費用を本来の費用に振り替える
という二段階があります。
例えば、2月分の事務所家賃を1月に前払いした場合を考えてみましょう。
前払いしたときの仕訳
前払費用10,800 / 未払金10,800
1月に前払費用を計上すると同時に未払金を計上します。
2月分の家賃なので、今月はまだ役務提供を受けていません。
ですので、ここでは消費税の計上もしません。
本来の費用に振り替えるときの仕訳
支払家賃10,000 / 前払費用10,800
仮払消費税800
2月になったので前払費用ではなく、本来の支払家賃に振り替えます。
同時に役務提供を受けたと言えますので、ここで仮払消費税を計上します。
なお、前渡金も同じ考え方です。
前払費用には短期前払費用の特例というものがある
前払費用と消費税について調べていると、必ず、短期前払費用の特例というものが出てきます。
これは、向こう1年以内の役務提供への支払を前払費用ではなく、費用計上している場合はそれでもいいですよという決まりです。
上の家賃の例で言うと、1か月先の分を前払費用ではなく支払家賃で計上するということです。
こうすると、3月決算であれば3月に翌年度の4月分の家賃を計上することになります。
つまり、常に1か月先の家賃が計上されているので、ずっと継続していれば1か月ずつずれているだけで、1年で12か月分の家賃が計上されることになります。
本来なら決算で前払費用計上すべきじゃないか?と思うのですが、税務ではこれが認められているのです。
法人が、前払費用の額で、その支払った日から1年以内に提供を受ける役務に係るものを支払った場合において、その支払った額に相当する金額を継続してその支払った日の属する事業年度の損金の額に算入しているときは、1にかかわらず、その支払時点で損金の額に算入することが認められます。
引用元: 国税庁
では、消費税はどうなのか?といいますと、短期前払費用の特例が適用される場合は、消費税も一緒に計上することができます。
なお、前払費用のうち、所得税又は法人税の取扱いにより必要経費の額又は損金の額に算入することが認められている短期前払費用は、その支出した課税期間の課税仕入れに含めることになります。
引用元: 国税庁
会計上は実はこの方法は認められていない
注意してほしいのは、短期前払費用の特例はあくまで税務上の話です。
会計基準では、短期前払費用の特例というものはないので、原則は翌月の家賃ならば前払費用計上が必要です。
会計監査等が短期前払費用の方法で通っているのであれば、それは黙認されている、ということですね。
ちなみに管理人は、会計監査でこの話を聞いて初めて知りました。
「税務はそれ(短期前払費用)でOKだけど、会計では認められないよ」とのこと。
まとめ
前払費用や前渡金は基本的に、前払い、前渡しの段階では消費税は計上できません。
消費税の認識時期が、ものを買った時点やサービスが完了した時点だからです。
ですが、短期前払費用の特例が認められる場合は、前払いであっても費用計上をして、さらに消費税もこのタイミングで計上することができます。
短期前払費用は、税務の話で会計では認められていないので注意しましょう!