給与の代わりに商品券を社員に配る、ということは割とよく言われる話かと思われます。

一部では税金がかからないから、インセンティブを商品券で支給しているという会社もあるようですね。
また、パートやアルバイトの方で多いのが、扶養から外れないように勤務時間を調整しているのに、割増しで現金支給されると逆に困るから商品券にするという考え方もよく聞きます。

ただ、本当に商品券で支給すると税金がかからずにお得なのでしょうか?

今回は所得税法に照らし合わせて、この疑問を解決していきたいと思います。

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商品券は給与課税になる?

結論から言いますと、商品券は給与課税になります。
つまり、普通の給与と同じように現金で支給されたのと何ら変わらないのです。

商品券で支給して節税しよう!だとか商品券は福利厚生費です!とか少額なら大丈夫です!とか言っている有害な情報があふれていますが、所得税法に照らすと給与課税です。

これについては、国税庁が記念品の支給について説明しているところに明記されています。

No.2591 創業記念品や永年勤続表彰記念品の支給をしたとき
[平成30年4月1日現在法令等]

 創業記念で支給する記念品や永年にわたって勤務している人の表彰に当たって支給する記念品などは、次に掲げる要件をすべて満たしていれば、給与として課税しなくてもよいことになっています。
 なお、記念品の支給や旅行や観劇への招待費用の負担に代えて現金、商品券などを支給する場合には、その全額(商品券の場合は券面額)が給与として課税されます。
 また、本人が自由に記念品を選択できる場合にも、その記念品の価額が給与として課税されます。

ここでは、記念品を渡すなら、条件付きで給与課税しなくてもいい。
だけど、現金や商品券は給与と全く同じ扱いにします、ということを言っています。

このような内容を公表する背景に、こんな質疑応答もあります。
ここでも、商品券は給与になると明言しています。

【照会要旨】
 当社では、創業50周年を迎えたことから、本年12月に在籍する全従業員に対し、一律1万円分の商品券を支給することとしました。
 この場合、従業員に支給した商品券については、どのように取り扱われますか。

【回答要旨】
 給与等として課税の対象になります。

 創業50周年等の区切りを記念して従業員に対し記念品等を支給することは、一般的に行われているものであり、この記念品等については、1その支給する記念品が社会通念上記念品としてふさわしいものであり、かつ、そのものの価額(処分見込価額により評価した価額)が1万円以下のものであること、2創業記念のように一定期間ごとに到来する記念に際し支給する記念品については、創業後相当な期間(おおむね5年以上の期間)ごとに支給するものであること、のいずれにも該当するものについては、強いて課税しなくて差し支えないとしています(所得税基本通達36-22)。
 この取扱いを受けるのは記念品に係る経済的利益に限られるため、記念品に代えて支給する金銭については、給与等として課税の対象になります。
 照会のように、会社の創業記念として商品券の支給が行われる場合、その支給を受けた各従業員は当該商品券と引き換えに、商品を自由に選択して入手することが可能となりますので、商品券の支給については金銭による支給と異ならないといえます。
 したがって、照会の商品券の支給については、課税しない経済的利益には該当せず、給与等として課税の対象になります。

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現物支給には当たらないのか?という疑問

ここまでの引用で説明はほぼ済んでしまっているのですが、「いやいや、商品券はモノを渡すんだから現物給与に当たるだろう」というような悪あがきをする人もいます。
参考までに現物給与を当たってみましょう。

3 現物給与
 給与は、金銭で支給されるのが普通ですが、食事の現物支給や商品の値引販売などのように次に掲げるような物又は権利その他の経済的利益をもって支給されることがあります。

(1) 物品その他の資産を無償又は低い価額により譲渡したことによる経済的利益
(2) 土地、家屋、金銭その他の資産を無償又は低い対価により貸し付けたことによる経済的利益
(3) 福利厚生施設の利用など(2)以外の用役を無償又は低い対価により提供したことによる経済的利益
(4) 個人的債務を免除又は負担したことによる経済的利益
 これらの経済的利益を一般に現物給与といい、原則として給与所得の収入金額とされますが、現物給与には、1職務の性質上欠くことのできないもので主として使用者側の業務遂行上の必要から支給されるもの、2換金性に欠けるもの、3その評価が困難なもの、4受給者側に物品などの選択の余地がないものなど、金銭給与と異なる性質があるため、特定の現物給与については、課税上金銭給与とは異なった取扱いが定められています。

ここでも現物給与も原則は給与所得になると言っていますね。
そして、例外的に要件を満たせば非課税になります。

商品券のことを考えた場合に引っかかってくるのが、「換金性に欠けるもの」という要件です。
商品券は当然のことながら、換金性はとても高いです。
取り扱い店舗であればほとんどのものが買えますし、売ろうと思えば売ることもできます(手数料を取られるので、結局手取りは減りますが)。

同じような考え方で、図書カード、クオカードなども商品券扱いになります。

また、選択の余地がないものに当てはまらないものとしては、カタログギフトがあります。
ちょっと意外かなという気もしますが、選択肢が与えられていることがほとんどですので、課税対象の現物給与になるんですね。

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商品券の支給はしたい、課税対象にはしたくないという場合

これって、かなり難しいです。
というか、今まで見てきたとおり、商品券=現金といって差し支えないので、ほぼ無理です。

以下の方法は、単なる個人的見解ですので、これらの方法を採用して生じたいかなる損害等についても管理人は一切責任を負いません。
必ず顧問税理士や税務当局等の専門家とご相談の上判断してください。

限りなく黒のグレーとしては、会社として交際費にして法人税は払うから所得税は見逃して、という方法です。
法人税も所得税も税務署の同じ調査官が調査する、というのであれば忖度の余地もあるかとは思いますが、よほど寛大な調査官出ない限りはこの方法はできないでしょう。

唯一考えられるのが、会社を通さず、個人同士のやり取りとすること。
社長のポケットマネーで商品券を買って配る、という方法ですね。
こうなると贈与税の範囲になるので、年間で110万円までであれば非課税になります。

まぁ、そこまでして支給するのか?という問題はありますが…。

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まとめ

商品券で支給して節税しよう、などという誤った情報がまことしやかに流れていますが、所得税法ではそんな規定はありません。
商品券は換金性や選択範囲などが現金とほぼ変わらないので現金と同じものとして扱われるのです。

ですから、普通の給与と同じで課税されてしまうのです。

わかりづらいところではあると思いますので、どうか気をつけて下さいね。

似たような案件として、通信教育助成金などの給与課税の判断があります。
あわせて参考にしてみて下さい。