仕事を進めていくうえで、取引先とのトラブルが発生することがあります。
こちらのミスで取引先に損失を発生させてしまった、取引先の商品を壊してしまった、など様々な事例があります。
そのような場合、損害賠償金という形でお金を支払ったり、商品を買い取ったりします。
ではその時に消費税はどうなるのか?
実は、消費税がかかるかからないはケースバイケースなんです。
今回は、損害賠償金の消費税について説明します。
損失補填のための損害賠償金
例えば、取引先の商品カタログの作成を請け負って納品をしたが、一部の商品の金額を誤って安く書いてしまったような場合、正しい値段と安く書いてしまった値段の差額は損失補填、つまり穴埋めとして支払いをしなければならないのが一般的です。
このような損失補填の場合には、消費税はかかるのでしょうか。
結果的に、損失補填は消費税課税対象外、不課税になります。
理由は、その支払に対価性が無いからです。
消費税の課税対象の考え方として、国内において事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡等、というものがあります。
No.6105 課税の対象
[平成29年4月1日現在法令等]消費税の課税対象は、国内において事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡等及び外国貨物の引取りです
出典:国税庁
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6105.htm
対価性というのは、そのお金を支払うことで何か見返りがあること。
消費税法で言えば、資産の譲渡や役務の提供ですね。
お金を払って、物を手に入れたりサービスを受けたりするということです。
早い話が、「商売」が成り立っているかどうか、です。
しかし、損失補填はそのような対価性はなく、払って終わりです。
お金を払って何かを買うわけでも、サービスを受けるわけでもありません。
ですから、損失補填は課税対象外なのです。
No.6157 課税の対象とならないもの(不課税)の具体例
[平成29年4月1日現在法令等](7) 心身又は資産について加えられた損害の発生に伴い受ける損害賠償金・・・・対価として支払われるものではないからです。
出典:国税庁
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6157.htm
破損した商品の引き取り
運送の途中や保管中に、取引先の商品を壊したり傷つけたりしてしまうことがあります。
その場合、その場でお買い上げとなることがよくあります。
この場合も商品が売れなくなったための損失補填では?と考えることもできますが、素直に考えると、商品の引き渡しがある時点で単なる商品売買です。
商品売買であれば、私たちがお店で買い物するのと変わらないため、消費税の課税取引になります。
買い取り金額は、実務上は定価販売となることが多いです。
ただ、注意しなくてはならないのは、その商品がそのまま、もしくは少し直せば使える程度であることが条件です。
全く使い物にならなくなったゴミを買って、「資産の譲渡」を受けた、とは言えないのです。
国税庁タックスアンサーの抜粋を引用しますね。
No.6157 課税の対象とならないもの(不課税)の具体例
[平成29年4月1日現在法令等](7) 心身又は資産について加えられた損害の発生に伴い受ける損害賠償金・・・・対価として支払われるものではないからです。
しかし、損害賠償金でも、例えば次のような場合は対価性がありますので、課税の対象となります。
イ 損害を受けた棚卸資産である製品が加害者に引き渡される場合で、その資産がそのままで使用できる場合や、軽微な修理をすれば使用できる場合出典:国税庁
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6157.htm
損害賠償の勘定科目は?
損害賠償金などを払ったりもらったりしたら、勘定科目は何で処理すればよいでしょうか?
基本的に、本業から一歩引いた収益費用であるためを営業外損益で処理するのが一般的です。
管理人は、両方の処理をした経験があります。
そのときは、損害賠償金を払ったら、雑損失、
もらったら、雑収入で処理をしました。
まとめ
損害賠償金と一口で言っても、対価性のない損失補填や破損した商品の買い取りなど様々です。
明確な線引きがないので、ケースバイケースではあるのですが、消費税法の課税の考え方を覚えておけばある程度対応できるでしょう。
単なる損失補填は、対価性がないので課税対象外、不課税です。
買い取りは資産の譲渡と言えるので、課税取引です。
ただし、そのままもしくは少し直せば使える、という条件付きで、完全に壊れて使い物にならなくなってしまったものを買い取る場合は、もはや資産と言えないので課税対象外となります。