法人税別表8の無限ループに迷い込んでしまい
お悩みのあなたへ送る、解決方法。

受取配当金の益金不算入を計算する別表8には、
総資産を記入する欄があります。

何のことはない、ただBSの総資産にちょっとした金額を
加減算するだけ。

が、実はこれが非常にクセ者。
無限ループが始まるのです。

結論から申し上げましょう。
ループ恐るるに足らず!

※この計算は、完全子会社以外の会社から配当を受けるときのみ使います。

スポンサーリンク

別表8って何?

という方に向けて簡単な説明をば。

受取配当金の益金不算入額を計算するための別表です。

受取配当金はなぜ、益金不算入、つまり会計上は
収益となるけれども税務上は益金にならないのでしょうか。

配当金の原資は、利益剰余金。
ざっくり言うと、当期純利益が積み上がったものです。
利益剰余金は税引前当期純利益から、法人税等を引いたものでした。
配当金は法人税を支払った後の利益、
課税済みの利益を原資としているというわけです。

課税済みなので、配当金を受けた会社に課税してしまうと、
二重課税になってしまうのです。

例えばこんな例。

B社はA社の完全子会社です。
B社の税引前当期純利益は100万円、24万円の税金を払って、当期純利益は76万円でした。

B社がA社に76万円の配当金を支払いました。
A社は、76万円を受取配当金として、営業外収益に計上します。

話を単純にするために、税率は24%、
B社は当期純利益の全額を配当金として支払い、
A社の収益は配当金しかなかったと仮定します。

もし、益金不算入でなければ、
A社は76万円×24%=18万円の税金を持っていかれます。

100万円の元手に対して、実に24万円+18万円=42万円もの
税金がかかってしまいます。

この例は2社だけだからまだマシですが、
孫会社、ひ孫会社など会社の数が増えていくと、
税金の3重取り、4重取りになってしまいますね。

だから、益金不算入額とします。

全部一律益金不算入にしろ、と言いたいところですが、
支配目的ではなく、単に配当狙いの投資であれば、
普通の収益とみなしてもいいんじゃね?ということで、
一定の割合をかけます。

完全子会社は、全額益金不算入。
他は株式の持ち株割合によって、
配当金から支払利息を引いて、50%ないしは20%(27年度より)をかけた
金額を益金不算入とします。

何がループなのか?

それでは、話を戻しまして。
無限ループといっても、何がどうループするのでしょうか?

ループするのはずばり、

総資産→課税所得→事業税→繰延税金資産→総資産→課税所得→・・・

こんな感じ。
なぜこんなことが起きてしまうのでしょうか?
順番に見ていきましょう!

総資産

まず、法人税申告書を作っているということは、
当然税金は計算していませんよね。

総資産は、税金や繰延税金資産計算前の数字です。

税金計算前の総資産を使って、受取配当金から引く支払利息の金額を計算します。
その金額で、受取配当金の益金不算入額を計算します。

課税所得

他の項目もいろいろ計算して、課税所得が確定しました。
めでたしめでたし!

とはなりません!!

事業税

課税所得が確定したということは、
事業税も確定します。

事業税は、計上した時は損金不算入ですが、
中間申告や確定申告など、申告した時に損金となります。

つまり、会計上は費用になっても、税務上はそれより後に損金になる
将来減算一時差異なのです。

将来減算一時差異はこのページが参考になります。

繰延税金資産

事業税は将来減算一時差異ですので、
繰延税金資産の計算対象となります。

ということは、事業税が計上されれば総資産が動きます。

ん!?

総資産が動いた!?

最初に総資産を使って、受取配当金の益金不算入を計算しました。
そして課税所得を確定して、税金を計算したはず。

え!?もしかして、総資産が動いたってことは
最初からやり直し?

しかも、やるたびに金額変わるから終わらないんじゃない!?

そう、これが無限ループなのです

でも、実は終わりはある

といっても、完全に無限なわけではありません。
これを繰り返すうちに動く金額がどんどん小さくなっていきます

通常は、たとえ総資産が動いても課税所得はそんなに変わりません。

総資産は、受取配当金から引く支払利息を計算するために使います。
計算式はこんな感じ。

支払利息×配当を受ける株の前期・当期の合計金額/総資産の前期・当期の合計金額

計算に使う金額の中で、総資産だけが突出して大きいのがイメージできるでしょうか?

具体的な数字を使ってみましょう。

受取配当金 100万円

支払利息控除 1,000万円×800万円/100億円=8,000円

益金不算入 (100万円-8,000円)×50%=496,000円
次に繰延税金資産まで計算を進め、総資産が2億円増えたとしましょう。
ループ2回目突入!!

支払利息控除 1,000万円×800万円/102億円=7,843円

益金不算入 (100万円-7,843円)×50%=496,078円
益金不算入額が、78円増えましたね。

法人税額が78円×23.9%=19円動くことになります。

この程度の金額であれば、切り捨てられるか、
動いたとしても、100円単位が繰り上がるか、です。

まとめ

別表8は、計算が地味にめんどくさい。

総資産→課税所得→事業税→繰延税金資産→総資産…のループが起きる。

ループは何度か計算すれば、影響のない金額に落ち着く。

どこよりもわかりやすい説明を心がけています。
是非、他のブログと比較してください!

他のブログと比較してみる

 

mail6_2
本日も記事をお読み下さいましてありがとうございます。
どんなことでも結構です。
あなたのご意見、ご感想、リクエスト等お聞かせ下さい!

ブログランキングへ戻る